素戔男尊を祀る古い神社は津波被害に遭わない?

素戔男尊を祀る神社に逃げれば津波被害に遭わない?

これは、興味深い記事ですね。

◎「スサノオ」を祀ったほとんどの神社が被災を回避 津波との関係が話題に〜大津波は“古い神社に逃げろ” 学術論文が話題
https://tocana.jp/2017/06/post_13562_entry.html
◎スサノオを祀った神社は被災を免れている
近頃ネットを駆け巡るオカルト話。かと思えば、元を辿れば東京工業大学 社会理工学研究科のグループが土木学会に発表した論文。「私達が学生時代、6年前の論文です。

東日本大震災の支援活動を行っている際、被災を免れた鳥居が目に付いて研究しました」とは神戸高専の高田知紀准教授だ。論文では、宮城県沿岸部に鎮座する神社の内、スサノオを祀る神社、熊野系神社、八幡系神社のほとんどが津波を免れた一方で、アマテラスを祀る神社の大半が被災したことが確認されたというもの。

◎皇室の祖先は御利益がない?
「そうじゃないんです。スサノオは斐伊川(ひいかわ)に住むヤマタノオロチを退治したと古事記にありますが、川の氾濫を例えた話といわれます。

スサノオは水害など自然災害、震災を治める神だからこそ、そうした災いに遭わない場所に祀られたと考えられるのです」。神社と震災の研究はその後、和歌山、四国へと発展。

「南海トラフ地震などの津波災害リスクを、平安時代の延喜式に記載された神社に着目して分析しました。沿岸部の神社は高知では555社、徳島では308社が津波を回避しうる」。

◎古社に逃げれば安全?
「いえ、地域の神社をよく見て欲しい。それが避難に繋がるヒントになればいいし、古来からの神社空間の維持に繋がります」。

「スサノオ」を祀る神社に逃げれば、津波被害から逃れられる」という記事ですね。ふむふむ。

ヤンキーな神さま素戔男尊(スサノオノミコト)

ちなみに「スサノオ」とは、日本書紀や古事記に登場する日本の神話の神さまの一人ですね。「すさのおのみこと」と言っています。

「すさのおのみこと」を漢字で書くと、
 素戔嗚尊
素戔男尊
須佐之男命
須佐乃袁尊
須佐能乎命
進雄尊

と、いろいろとありますね。

他にも、
 建速須佐之男命 (たけはやすさのおのみこと)
 神須佐能袁命 (かむすさのおのみこと)
 速玉之男 (はやたまのおのかみ)
 速玉男命 (はやたまのおのかみ)
 牛頭天皇 (こずてんのう)
 天王 (てんのう)
といった言い方もされています。多くの名前、変名を持った人格神です。

で、
 熊野神社
八坂神社
氷川神社
須佐神社
天王神社

などの神社ででお祀りされています。また、
 祇園信仰
津島信仰

とも関係があります。

日本神話では、やんちゃな神になっていますね。ヤンキーでDQNなところがあります。これが庶民感覚にマッチして、人気のある神となっているのかもしれませんね。

◎スサノオをまつる神社とは15分で解るスサノオのすごさ
http://spi-con.com/susanoo/

記紀は支配者側に都合が良いように創作

もっとも日本書紀・古事記といった記紀は、支配者側に都合がよいように、創作・ねつ造・改ざんした可能性があります。どこまで信用に足るものかどうかは疑問があるんですね。

記紀においては、「素戔男尊」は「国津神」とされています。が、これって、そういう人格神がいたのではないでしょう。

手腕の優れた政治家なりがいて、それを神にしたんじゃないんですかね。天照大神も女性ではなく、男性だったという説もあるくらいです。

で、支配者が登場する以前から、各地で自然信仰されてきた様々な自然霊(アニミズム)の上に、象徴化した観念神・人格神を上書きしたんじゃないかと睨んでいます。

この日本書紀と古事記は、体制側に都合がよく、巧妙に差し替えやらの意図を持って書き換えた可能性があります。

国津神と天津神とは地の神と天神のこと

そもそも天津神・国津神そのものの定義自体を、改ざんしている可能性が高い。いや、やっているでしょう。改ざんしたものを「神話」という物語にしてしまっている。

国津神とは「土着の神」と言われていますが、そうではなく、本来は「地の神」のこと。
狐霊、龍神といった地の神。
これが国津神の原義。
天神・地祇の「地祇」

天津神とは「大陸から来た神」と言われていますが、これも違って、本来は「天界から降臨した神」のことでしょう。
三十三天などの上位の天界から降臨してくる神を総称しているのでしょう。
天神・地祇の「天神」

素戔男尊は自然霊・国津神・地祇のこと?

で、「素戔男尊(すさのおのみこと)」は、その性格はやんちゃで、時にDQNになったりするものの、頼りがいのある神だったりします。人間臭いわけですね。

これって、自然霊の性格によく似ています。狐霊も怒らせると、バチを与えたり、祟ります。「素戔男尊(すさのおのみこと)」の性格に、どこか通じます。

おそらく「素戔男尊(すさのおのみこと)」は、こうした自然霊を象徴化した神なんじゃないかと思います。
つまり国津神です。
天神・地祇の「地祇」を人格神で象徴化したもの。

奈良時代に国の統一のために神社創建

で、記事には、「スサノオを祀った神社に逃げれば大丈夫」みたいなことが書いてあります。が、神社は、そもそも奈良時代から造られたものだったりします。

しかも、天照大神や素戔男尊といった人格神を祀るようになったのも、奈良時代から国家の政策により始まったことだったりします。

地方の豪族が有していた祭祀権を国家が管理し始めたのが奈良時代。

で、国は、アニミズムとしての信仰対象に加えて、天照大神や素戔男尊といった体制側に都合のよい人格神を祀るように改変しています。それが社殿を有した現在の神社の始まりです。

つまり、各地でバラバラで行っていたアニミズムに対して、国家が管理することで全国統一を図ろうとした「政治的な動き」が、神社創建の始まりだったわけなんですね。

言い換えると、律令国家による政治的な政策が神社創建だったということですね。国家統一のためにこしらえた宗教施設が「神社」。

意外と知られていない「神社の本当の話し」なんですが、これが本当であり、史実であることは、ちゃーんと明らかになっています。

こうした神社の本当の歴史については、井上寛司氏の『「神道」の虚像と実像』に詳しかったりします。

ただし、著者は反天皇主義的な歴史観をお持ちの方ですので、この点は注意しながら読み進めたほうがいいと思いますね。

明治以降の歴史認識と、柳田邦男氏への見解は偏っている感があって、鵜呑みにするわけにはいきませんが、歴史的な事実を押さえている点は評価ができます。知られざる日本の神道と神社の歴史がわかります。

アニミズム信仰の場は津波に遭いにくい

そういうことでして、神社は、実は、奈良時代から建造されるようになった新しい宗教施設だったりします。

しかし、神社が創設される以前から、自然霊を信仰するアニミズムがあったことは事実だったりします。

「素戔男尊(すさのおのみこと)」を祀る神社は、神社が造られる前から、アニミズムの信仰を集めていた歴史のある場所だったと思いますね。そう考えたほうが自然です。

今回の津波被害に遭ってない神社が、スサノオを祀っている所が多いというのが、そもそもの証拠になるんじゃないかと思います。

素戔男尊は地の神

で、論文に「スサノオは水害など自然災害、震災を治める神だからこそ、そうした災いに遭わない場所に祀られたと考えられるのです」とありますが、そうでは無いと思います。

スサノオの性格や業績を踏まえて、津波に遭わない場所に創建されたのではなく、アニミズム信仰が盛んだった場所(つまりアニミズム信仰の長い歴史のある場所)に、自然霊や地神の象徴としての人格神であり国津神である「スサノオ」を祀らせたからこそでしょう。
※この話しの詳しいことは、こちら。

歴史もかなり古く、何度もの津波の被害を受ける体験を経た古代人が、安全な場所でアニミズムの信仰を続けるのは当然でしょう。

そうした場所に、自然霊を象徴する国津神「素戔男尊(すさのおのみこと)」を祀る神社を創建したのは、律令国家による政策としての結果に過ぎないのでしょう。

国津神は地の神、天津神は天界の神

で、ここからも「国津神」とは、「地の神(狐霊などの自然霊)」であろうと推察できるわけですね。

そして、「天津神」とは、天界から降臨した神霊。これが本義なのでしょう。

東京工業大学 社会理工学研究科の論文では、「素戔男尊(すさのおのみこと)を祀る神社へ避難すれば大丈夫」としていますが、正確にいえば、神社が創建される以前のアニミズム信仰が盛んだった土地の神社へ避難すれば、津波の被害に遭う確率は少なくなる、というのが本当のところだと思いますね。

でも、とても興味深い論文だと思います。

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