ヨハネの黙示録にある悪魔・獣の数字666
ヨハネの黙示録。
今日のテーマである「悪魔・獣の数字666」が述べられている新約聖書文書です。
ヨハネの黙示録についてはこちらに詳しいことを書きましたが、
ヨハネの黙示録の真実を解説~後世に追加・改竄されていた
西暦92年以降に書かれた文書といいますね。
ただし、後に改竄されています。
で、オリジナルの文書に手を加えた人物(田川氏は「編集者S」と命名。SはサディストのSであるとか)は、西暦150年頃には改竄したのではないかといいます。
最も古い聖書の写本を見ると、オリジネルと編集者Sとの文体や思想は明らかに異なると。で、有名な「ハルマゲドン」などのおどろおどろしい箇所は、編集者Sの悪趣味による追記&改竄といいます。
しかし「悪魔の数字666」はオリジナルの「ヨハネの黙示録」に最初から記載されているといいます。
666は皇帝ネロを示す
ちなみに悪魔・獣を示す数字666。先ほど書いた通りで、オリジナルのヨハネの黙示録にあります。
でも驚くことなかれ。
666は悪魔を示す数字ではなく「皇帝ネロ」を指す数字であるといいます。
このことは古来から知られていたと。
事実、原文には「それはある人物の数字である」とあります。
該当箇所の一節にも「知性のある者は獣の数字を数えるがよい。それはある人物の数字である。そしてその数字とは666である。(ヨハネの黙示録13章18節:田川建三訳)」とあります。
読んだ通りです。ある人物の数字で、その数字を数えればいいわけです。
ちなみに最初にも書きましたが「ヨハネの黙示録」は西暦92年以降に執筆されています。皇帝ネロは西暦54年~68年に在世。
ヨハネの黙示録が書かれる以前に、皇帝ネロは在位。時期に矛盾はありません(符合します)。
ネロをヘブライ語にすると666に
ところで「666」。そもそも古代言語は数字も兼ねていたといいます。
で、「ネロ」をヘブライ語にすると「Qesar Nerón」になると。
で、これを数字に変換して合計すると666に。
ちなみにヘブライ語アルファベットの中には、数字に相当する文字が無いものもあります。で、それはスルー。すると合計666になります。
616とする写本もある
ちなみに「ヨハネの黙示録」の写本の中には「616」とするのもあるといいます。
が、写本が616にしたも理由があります。
そもそも「ネロ」を「Qesar Nerón」と表記するのはギリシャ語読み。
そこで「Qesar Nero」に修正。
すると、あれま合計616になると。
写本した筆記者も666の正体は「皇帝ネロ」であることを知っていたということですね。なので意図的に「616」にしたといいます。
このようにあらゆる観点から666は皇帝ネロを示しています。
そもそも原文を素直に読めば「人物を示す数字」とありますし「その数字を数える」とあります。皇帝ネロを指すのが至極合理的な解釈です。
ヨハネの黙示録13章18節「知性のある者は獣の数字を数えるがよい。それはある人物の数字である。そしてその数字とは666である」
右手・額に獣の刻印を押して悪魔の奴隷にする?
ところで「666」が皇帝ネロを示す数字であることがわかっても、そもそも「666」の一節は、「人々の右手、額に獣の刻印を押して悪魔の奴隷にする予言なんじゃないの?」なんて思うかもしれませんよね。
ところが、どっこい。
そうじゃないんですよね。
そもそも「悪魔の数字666」の一節は「ヨハネの黙示録 13章16~18節」にあります。
で、意味がつかみにくいんんですね。翻訳にも違いがあります。が、全部紹介します。
新共同訳による翻訳
新共同訳による翻訳はこちら。
16 また、小さな者にも大きな者にも、富める者にも貧しい者にも、自由な身分の者にも奴隷にも、すべての者にその右手か額に刻印を押させた。
17 そこで、この刻印のある者でなければ、物を買うことも、売ることもできないようになった。この刻印とはあの獣の名、あるいはその名の数字である。
18 ここに知恵が必要である。賢い人は、獣の数字にどのような意味があるかを考えるがよい。数字は人間を指している。そして、数字は666である。
新改訳による翻訳
新改訳による翻訳はこちら。
16 また、小さい者にも、大きい者にも、富んでいる者にも、貧しい者にも、自由人にも、奴隷にも、すべての人々にその右の手かその額かに、刻印を受けさせた。
17 また、その刻印、すなわち、あの獣の名、またはその名の数字を持っている者以外は、だれも、買うことも、売ることもできないようにした。
18 ここに知恵がある。思慮ある者はその獣の数字を数えなさい。その数字は人間をさしているからである。その数字は666である。
古い新共同訳による翻訳
また古い新共同訳と思しき翻訳はこちらです。
16 また、小さな者にも大きな者にも、富める者にも貧しい者にも、自由な身分の者にも奴隷にも、すべての人々に、その右の手あるいは額に刻印を押させ、
17 この刻印のない者はみな、物を買うことも売ることもできないようにした。この刻印は、その獣の名、またはその名の数字のことである。
18 ここに、知恵が必要である。思慮のある者は、獣の数字を解くが良い。その数字とは、人間を指すものである。そして、その数字は666である。
田川建三氏による翻訳
最後に田川建三氏による翻訳はこちらです。
16 そしてすべての者が、小さい者も大きい者も、富める者も貧しい者も、自由人も奴隷も、右の手の上か額の上に自分に(獣)の彫像(貨幣のこと)を与えるようにさせる。
17 そして獣の彫像(貨幣)、その者の名前ないしその者の名前の数字を持たない者は、誰も買うことも売ることもできないようにさせる。
18 ここに知恵がある。知性のある者は獣の数字を数えるがよい。それはある人物の数字である。そしてその数字とは666(皇帝ネロ)である。
田川建三氏の翻訳だけがわかりやすい
以上4種類の翻訳を紹介しました。で、ご覧の通りでしてそれぞれ違います。しかし結論を先にいえば田川氏の翻訳が一番わかりやすい。
最初の3つは、翻訳がおかしく、そもそも何を言っているのか意味不明なんですね。よくわからん。
てか、翻訳している方自身が、よくわかっていないと思います。こういうことって、古典を翻訳する際、起きるときがあります。
そもそも新約聖書はコイネー(古代ギリシア語)で書いてあります。が、オリジネルの聖書そのものが文法的におかしい文章も多いため、翻訳そのものが非常に難しいといいます。
なので、新約聖書の文章は、日本語になっていないのが多いわけですね。日本語が破綻しているのが多い。
ところが、コイネーの専門家でもある田川氏の翻訳はわかりやすい。さすがです。一番わかりやすいんですね。なんといっても意味が明瞭。合理的です。で、納得なんですね。
ヨハネの黙示録 13章16~18節はローマ帝国の経済政策批判だった
で、田川氏の翻訳の通りでして、13章16~18節は、悪政インフレを続けるローマ帝国の経済政策を批難している文言なんですね。
従来「刻印」と翻訳されてきた言葉は、文脈上「貨幣」のことになります。
で、この一節は、多くの人達がローマ帝国による酷い経済政策に従っている様を描いた一節ですね。で、その腐敗したローマ帝国を「666(皇帝ネロ)」といって示唆していると。
しかし露骨に批判をすれば処刑されます。なので遠回しに表現しているんでしょう。
内容は、ローマ帝国による悪政インフレにもかかわらず、貨幣経済に巻き込まれているため、嫌でも売買しなければならない様を言っているわけですね。
悪政インフレが続いたローマ帝国時代
ちなみに当時(ローマ帝国時代)は、悪政インフレが続いていたことがわかります。
というのも「ヨハネの黙示録」の6章6節には、「小麦は1コイニクス(約1リットル)で1デナリオン(1日の報酬額)、大麦は2コイニクス(2リットル)で1デナリオン」とあるからです。
ここも当時の経済政策を批判した一節になります。
で、1コイニクス=約1リットル、1デナリオン=1日の労働で得られる報酬金額であると。1日の報酬をアルバイト報酬の8千円としても、6章6節は、
・牛乳パック1個分の小麦・・・8千円
・牛乳パック2個分の大麦・・・8千円
となります。
これが当時のローマ帝国時代の物価。小麦が8千円(以上)!超インフレ。日々パンを食べることができるかどうかもわからない過酷な生活です。
当時は追い詰められた生活だった。これを批判、批難しないわけにはいかなかった。
悪魔・獣の数字666はローマ帝国への批難を意味していた
ヨハネの黙示録13章16~18節「悪魔の数字666」をめぐる一連は、悪政インフレが蔓延するローマ帝国時代の経済を批判した文章ということですね。これが一番納得します。
これが最も明瞭です。
当時は食うや食わずといった追い詰められた日々。なのでイエスによる救済をうたった夢と希望のあるファンタジー作品「ヨハネの黙示録(改竄前の文書)」を書いたんじゃないかとも思います。
暗い未来を予言したオカルト文書ではありません。
オリジナルのヨハネの黙示録
ちなみにオリジナルのヨハネの黙示録は【4章、6章、10章、11章、12章、13章、14章、17章、18章、19章、20章、21章、22章】になるといいます。
内容は、キリスト教を信仰していると最後に救済が訪れるという希望の満ちた文学作品。悪政が酷かったローマ帝国への批判が根底にあったようです。
つまり、イエスが再臨して、悪を成敗する最後の審判が下され、イエスを信じていた人はみんな天国へ、よかったね♪で、新世界創造とともに千年王国が到来。めでたし、めでたしby日本昔ばなしといったお話しですね。
キリスト教教義のキモがファンタジー&ハッピーエンドに描かれた文学作品。
これが魔界めいたおどろおどろしい話しに改竄されたというわけですね。
なので「666」も、まるで悪魔か魔王か何かを示す特別な数字(ナンバー)と錯覚しやすかったということなんでしょうね。
しかし改竄された章などを取り除くと、わりとスッキリとしたファンタジー小説なことがわかります。
で、スンナリと666はネロっちであることがわかります。
666は世間に影響を及ぼしてきた
それにしても「ヨハネの黙示録」の「666」。「ハルマゲドン」。
キリスト教を知らなくてもこれらの名前だけは知っている人は多いと思いますね。
オカルトではお馴染み過ぎるくらいで、「ムー」では定番です。
「ヨハネの黙示録」は、世紀末・世の終わりを描いた文書として、文化、芸術、世相などなど多方面に影響を及ぼしています。中でも「悪魔のナンバー666」「ハルマゲドン」。
おそらくノストラダムスの大予言と双璧となる魔界情報だったのではないかと思います。
私も中学生の頃、サブカルの話題で「ヨハネの黙示録」を知ったほど。しかし当時は、聖書の日本語がおかしく感じられて読めなかったものです。
ここ最近になって聖書を完読しましたが、やっぱり日本語そのものが破綻しているんですよね、聖書って。
中学、高校の頃はまともに読む気も起きなかった聖書(ヨハネの黙示録)なんですが、読むと、そうでもないなあと思ったものです。創作臭がプンプンするわけですね。
で、田川建三氏らの著書を読むと、後世に追記されて、
聖書の中でももっとも影響を及ぼしたのが「ヨハネの黙示録」であるとも。映画の題材にもなっています。宗教にも影響を及ぼしています。
「ハルマゲドン」「悪魔のナンバー666」「最後の審判」。
666は悪魔を示すナンバーでもなければ、世界征服の陰謀を示す数字でもなく、悪名高い皇帝ネロを示す数字だったということですね。で、ローマ帝国の悪政を批難する文章だったということですね。
一件落着。
追記
当時の小麦は、現在の価値に換算すると8千円以上。
むむむ。まさかウクライナ戦争にかこつけて、小麦をはじめとした原材料価格をつり上げて、ローマ帝国よろしくの悪政インフレを目指しているのか?なんてゆー妄想もかき立てるのが、魔界ちっくに色づけられてしまった「ヨハネの黙示録」。
「ヨハネの黙示録」の正体がわかったとしても、これからも「ムー」のネタとして、これからも使われ続けるんじゃないかと思ひます。