笙とパイプオルガン~高域の不協和音が神々の響きを表す

日本の雅楽の楽器「笙(しょう)」は神の光を奏でる

(しょう)。
言わずと知れた日本の雅楽の楽器。

この笙の響きが実に素晴らしい。

笙 大塚惇平 Improvisation 1

引用元:大塚惇平氏YouTube公式チャンネル

笙は、高域でキラキラと鳴り響きます。
この響き、神々の世界からの光をイメージさせます。
実際この響きは、神々しい「光」を音で表しています。

笙の響きは不協和音によるものだった

この笙の和音は「不協和音」と呼ばれるものです。
不協和音とは、自然な和声(ハーモニー)ではなく、
濁りや緊張を生み出す響きとされています。
使用する文脈によっては不快に感じらる響きです。

ところが日本の雅楽では、古来より不協和音を、積極的に取り入れています。
といいますか雅楽の世界では不協和音こそが重要です。
不協和音を巧みに取り入れ、使うことで、奥行きや深みを出そうとしています。
こういう感じですね。

至淵境 笙について
http://sienkyo.jpn.org/sho01.htm

ご覧の通りで、笙の和声は全て「不協和音」と言われる音の構成(和音)です。
しかしこの響きにこそ「神々しさ」「雅やかさ」「品位」を
感じ取っていたのでしょう。
いや、実際に感じます。

西洋音楽では長い間「不協和音」は禁断

ちなみに伝統的な西洋の音楽では、「不協和音」はは「汚い」「不快」とされています。
「禁断の和声」です。
昔は「使っちゃいけない」「混ぜるな危険」なハーモニーです^^;

しかし不協和音は、今では音楽の手法として確立されています。
19世紀になってから、音楽の手法に行き詰まりが出てきて、
新しい表現の試みとして、ドビュッシーらが不協和音を取り入れ始めたのが
きっかけです。
この流れが、ジャズ、ボサノバに取り入れられ、
やがて大衆音楽となって広まっていきます。

現代ではポピュラーミュージックも不協和音が取り入れています。
むしろ不協和音のお陰で新しさが出るくらいです。
不協和音が入った楽曲は、スパイスが効いたようなもので、
実はヒット曲が多かったりもします。

現在ではPerfumeの楽曲の多くがそうですね。
中田ヤスタカさんがクリエイトしている作品です。

[Official Music Video] Perfume「ポリリズム」(short ver.)

※引用元:Perfume YouTube公式チャンネル

Prffumeの初期の作品であり、ブレイクのきっかけとなった「ポリリズム」ですが、
不協和音や不協和音となる音が効果的に使われています。

不協和音を巧みに使った音楽は「最先端の音楽」だったりします。

日本人は不協和音に神々しさを感じていた

笙(しょう)に聞くことができるように、
不協和音に美しさを感じる、この日本人の感性、すごいですよ。
普通ではありません。

日本の雅楽は、5〜9世紀頃には始まっていたと言われています。
「世界最古のオーケストラ」だったりします。
実は雅楽は世界で最も古いオーケストラでもあるんですね。

この雅楽、笙に代表されるように高域できらめく音を使い、
神々しさを表現しています。
まさに「神の音楽」といった感じがします。

西洋ではバロック音楽が神々しさを表していた

ちなみに西洋でも教会音楽として、神を称える音楽が登場しています。
バロックです。
しかしバロックは17世紀に登場しています。

西洋では日本よりも約1000年後に、
楽器で神を称えることが起きているわけです。
日本のほうが約1000年、先です。

バロックでは、バッハのオルガン曲が有名です。
ですが、バッハは雅楽のような不協和音を積極的に使っていません。
伝統的な和声に従っています。
たとえばこちら

J.S. Bach, Sinfonia from Cantata No. 29 – Diane Bish

※引用元:Diane Bish YouTube公式チャンネル

バッハの「カンタータ 第29番 より 第1曲シンフォニア」ですね。
有名なオルガン曲です。
メロディックな綺麗な作品です。
キラキラした曲で、いい作品です^^

けれどもバッハの作品には、日本の「笙」のような
複雑で豊饒かつ精妙なキラメく響きはありません。

その代わり、パイプオルガンの「高域サウンド」を使用し、
きらびやかさを出しています。
また迫力のある低音を導入することで、
荘厳さを醸し出すことにも成功しています。

パイプオルガンは、日本の雅楽と違い、音域の広い楽器です。
そのため、ダイナミックな表現ができる点に魅力があります。
いわばパイプオルガンはシンプルな響きの中で、
高域と低域をふんだんに使って、パワーで神々しさを表現しているともいえます。
しかし「音の構成」そのものはシンプルです。

笙とパイプオルガンとで神々しさの表現の仕方が異なる

雅楽の「笙」は、高域の音の複雑な不協和音を使うことで
静寂の中で神の光と神を表現しています。
これ故に、奥ゆかしくも豊かで神々しい雰囲気を巧みに表現することに成功しています。
パワフルさはありません。
ありませんが、その静謐な中で、静かにあふれてくる神々しさがあります。

一方、パイプオルガンは、高域のリードを使う
単純な和音構成(ハーモニー)になっています。
しかし低域の音を入れることで荘厳さを出し、
全体としてダイナミックな響きとなっています。

どちらが好きかどうかは、それぞれの好みになると思いますが、
私は雅楽の「笙」の響きに、天才的な音構成(ハーモニー)を感じます。
 

雅楽は、音楽理論でいえば最先端です。
西洋人が、音楽理論の探求の末にたどりついたのが不協和音の使い方です。
不協和音は、長い間「不快」とされた響きです。

ところが日本人は、いきなり不協和音を使い始めるという感性。
しかも不協和音に心地よさ・美しさを感じるという塩梅^^;

日本人の感性は「精妙だ」と思っていますが、
こうした雅楽の世界を見ても、「やっぱり」と思いますね。
日本人のこうした感性はすごいですね。

といいますか、日本人には日本人の優れたアートの感性があって、
西洋人には西洋人の優れたアートの感性があるってことですね。

それにしても「笙」の響きは天才的です。

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