平均律と純正律~本当は汚く不協和音な平均律和声がテンションノートを生みサウンド主体の音楽を生み出した

音楽の基本である「和音」

コードの話しをしてみようかと思います。
コードとは「和音」のことですね。
音楽の三要素の一つです。

コード(和音)とは、たとえば「ド・ミ・ソ」といった複数の音で構成される音のかたまりをいいます。
和音(コード)は、古典的な音楽では3つの音構成が基本です。

たとえばハ調の場合、
ⅠはC(ド・ミ・ソ)・・・トニック
ⅣはF(ファ・ラ・ド)・・・サブドミナント
ⅤはG(ソ・シ・レ)・・・ドミナント
です。
古典音楽では、この3つを、トニック、サブドミナント、ドミナントといいます。

そして、この「音のかたまり」であるコ−ドの「動かし方」が綺麗であると、
深い感動を引き起こします。
この和音の動かし方を「コード進行」といいますね。

そして、和音の動かし方にも「こうするのがベストです」という決まりがあって、
これが「カデンツ」と言われるお約束です。
鉄板ですね。

和音は本当は「不協和音」で「汚い」

しかし「ドミソ」の和音。
実際に鍵盤楽器で弾くと、何かおかしく聞こえませんか。
濁って聞こえます。

私など、幼少の頃から和音には違和感があって「変」と思っていました。
音楽の基本の「ドミソ」の和音が汚く聞こえるわけです。
不協和音のような響きが聞こえるわけです。

これはたぶん私だけでなく、多くの人が感じているのではないかと思います。
「ドミソ」にしても「ファラド」にしても「ソシレ」にしても濁っています。
汚い「うねり」があるのですね。

実際、コードは濁っているといいます。
ウヮンウヮンウヮンウヮンといった「うねり」が出ています。
 

実は「和音は汚い」「不協和音」というのが真実だったりします。
決して「調和の取れた美しい響き」ではなかったりします。

しかし、和音が汚くなったのは、実は19世紀以降のことだともいいます。
このことはずっと後になってから知ったのですが、19世紀以前は綺麗な和音だったとか。
このことを知って納得したわけですが、和音の響きには変遷があるわけですね。

では和音は何故、汚くなったのか、そしてその理由とは?
そもそも「ある時期」からコードの響きが違ってくるなどあり得るのか?

そんな疑問も出てきますが、和音の音の響きには変化があったといいます。
これはちょっとした音楽のミステリーです。
しかし重大なことだったりします。

平均律の和音は美しくない

和音が汚く聞こえるのは、実は「平均律」という音階が原因でした。

平均律。
平均律とは、1オクターブを均等に12で分割して作られる音階です。
実は、現代の音楽では「平均律」という音階が使われています。

「え、それって当たり前のことでは?」と思う方も多いかもしれません。
が、違います。

バロック・古典・ロマン派の時代は「純正律」の音階だった

音階は、均等に分割されたものではなかったりします。
少なくとも、17世紀から18世紀のバッハ、モーツァルト、ベートーベンといった
バロックから古典、ロマン派の時代では、「平均律」による音階は使用されず、
「純正律」といわれる音階が使用されていました。
現在とは違う響きの音階を使用していたということですね。

もっとも研究者によっては諸説もあります。
ですが、昔は純正律で作られていた可能性が高いようです。

古典的な音楽理論は、純正律に基づいて作られていました。
ですので、3つの音から構成される和音で
充分、美しいハーモニーを奏でることができたわけです。

逆にいえば純正律とは「和音が綺麗に共鳴するように音階が作られている
ということだったりします。

平均律とは和音が綺麗に共鳴することを考慮していない音階

ところが平均律の和音の場合、3つの音で奏でると、
ひどい「うねり」が聞こえて、濁った音に聞こえます。
響きがおかしいのです。

これもこのはずで、元々、平均律の音階によるコードは、
和音が綺麗に共鳴することを考慮していない音階」だからです。
平均律の場合は必然的に「うねり」「歪み」が生じるようになっているからです。

ですから、純正律と平均律とは、異質な音階と言っていいと思います。

純正律の和音と平均律の和音とは異なる

平均律は和音が汚いですので、音楽として正常に成立しにくいわけです。
そこでテンションノートが使われるようになってきたと考えています。
平均律の和音が汚いことから、テンションノートの発展があったと、
個人的には睨んでいます。

純正率の音階と、平均律の音階とは違います。
同じ12音階でも、微妙の音の周波数が異なるのですね。
単音で聴いているときは分かりにくいのですが、
「和音」で聴くと、そのその違いが明らかに分かります。

純正律の場合、「ドミソ」「ファラド」「ソシレ」の和音は実に綺麗です。
濁りが少なく、共鳴が生じていて透明感が出てきます。
あの特有のウヮンウヮンウヮンとしたうねりが少なくなります。

純正律の音階のことを、子供の頃は知らなかったですが、
「和音が濁っている」と感じたのは、
実は平均律の音階が生み出す「濁り」だったわけです。

純正律と平均律の違いですが、Youtubeに分かりやすい動画があります。
さすがYoutubeですね。
調べ物はYoutubeでもできてしまいます。

平均律vs純正律シリーズ 純正律の調律を体験しよう

お聴きの通りです。
これを聴けば分かるでしょう。
純正律のクリヤーな響きもわかります。

ドビュッシーは平均律の歪みを活かしてテンションノートを活用した

平均律の音階が生み出す和音には「濁り」「ゆがみ」「うねり」がありますが、
この汚い和声故に、テンションノートが発展してきたと個人的には考えています。

こういったことを音楽学校で言っているかどうかは知りませんが、
個人的にはそう考えています。

テンションノートの理論が発達するのも、平均律のピアノが普及するようになってからですね。
端的にいえば19世紀の近代・現代音楽の時代からです。
先駆けはワーグナーやドビュッシーでしょう。

ドビュッシーは和声を破壊し、斬新な和声を作り出した天才として知られています。
しかし彼が斬新な和声を作り出した背景には、平均律があったと思いますね。

ドビュッシーは好んで属音(テンションノート)を使用しています。
この流れはジャズに受け継がれて、より発展していきます。
ジャズではテンションノートを多用します。
いえ、テンションノート無くしてジャズは成立しません。

テンションノートとは属音のことをいいますね。
テンションノートの使い方としては、
たとえばC(ドミソ)に、Cmaj7(ドミソ・シ)という感じで、「シ」の音を加えます。
これがメジャーセンブといわれるコードになります。

このコードを聴くとわかりますが、「シ」の音を入れても濁りは相変わらずあります。
ですが、オシャレな響きになっています。
このオシャレな響きこそが、和音の汚さをごまかすことに
成功しているのではないかと思っています。

つまりテンションノートとは、元々歪みのある平均律だからこそできたコードということです。
濁りに対して、濁りを入れて、逆にお洒落さを出してしまう、
そういう和声のテクニックではないかと考えます。

元々濁っているもの(和音)にお化粧(テンションノート)をほどこして、
綺麗に見せようとするには、どことなく人間のサガに似ています^^;

ボサノバサウンドの秘密~平均律の汚さを誤魔化す方法

平均律が奏でる和音の汚さを誤魔化すのがテンションノートということですが、
コードの汚い響きをお化粧する方法はほかにもあります。

たとえばC9(ド「レ」ミソ)です。
「レ」の音を入れるやり方です。
3つjの和音の上に重ねるのではなく、間に入れ込んでしまうやり方です。

これも和音の濁りを消すために(誤魔化すために)、あえてさらに「濁り」をガツンと加え、
どことなくオシャレ感を出すことに成功しています。
汚いのですが、なんとなくオシャレに聞こえて、
平均律の歪みを誤魔化してしまう方法です。

こういうのが、ボサノバでは多用されます。
 

しかし「和音の濁りを誤魔化すためにテンションを入れる」ということは、
たぶん、どの音楽テキストにも書いていないことだと思います。

表現は悪いのですが、散らかっている部屋に、綺麗なものを入れても散らかったままですが、
「なんかその汚さに趣があるよね」と、寛容する気持ちで認めてあげる心境にも似ています。
本当は「うねり」があって、濁っていて、汚い響きなんですが。

散らかって汚いな、というのを認めた上でなおかつ趣を感じるのが「ジャズ」。
だからジャズとお酒は合うのでしょう。

散らかっている汚さを表に出さす、装いの綺麗さを出すのが、ボサノバ。
ボサノバもゴチャゴチャとした所がありますが、
そのゴチャゴチャとは、本当は汚い音の響きだったりします。
これがボサノバサウンドの秘密なのではないかと

変則コードを多用する中田ヤスタカ氏や坂本龍一氏らもそうですね。

子供の頃、平均律の和音の「濁り」が嫌だったのではないかと回顧しています。
だから、ボサノバのようなテンションを含んだ和音が好きになっていったのではないかと。
オシャレな響きですし。

幼少の頃からボサノバ好きだった自分の謎が解けたような、
そんな音楽の「気付き」だったりします。

平均律は近代になってから普及するようになった

このように、音階には純正律と平均律があるということですね。
しかし音階にはほかにもあり、音階に関しては諸説もあるようです。

しかしおそらく、17世紀から18世紀にかけての
バッハ、モーツァルト、ベートーベンの時代は、純正律の音階が使われたと思います。
人間の感覚器官がとらえることは、今も昔もそう変わりないからです。

近代の音楽、ドビュッシーの時代からピアノは量販され、
平均律が普及するようになっています。
ドビュッシーの奇抜な和声は、平均律の賜物であると思います。

ジャズも同じです。
ジャズの精緻な音楽理論も平均律を背景にしています。
ボサノバもそうです。

斬新なコードが誕生している背景には、
平均律といった元々濁った和音しか作れない音階が原因ではないかと考えています。

濁った和音を誤魔化すために、さらに音を入れる。
元々濁っているので、音を加えても違和感を憶えにくくなる、
そういった曖昧模糊とさせる手法ではないかと思います。

しかしテンションが効いている音楽を長時間聴いていると、疲れていきます。
短時間なら「おもしろいな」と感じますが、長時間聴くものではないと思いますね。

長時間聴くことに耐えられるのは、純正律の音楽ではないかと思います。

電子楽器で純正律を再現できる時代

純正律の音楽は、実はすでにあります。
といいますか、鍵盤楽器やギター以外の楽器なら純正律ができます。
ピアノ、オルガンは調律で平均律の音階が多くなっています。
ギターはフレットで固定されています。
もっともポピュラーな楽器が平均律です。
しかし最近では、電子楽器に純正律を搭載したものも一般的になっています。

純正律の音楽といえば「エンヤ」です。

エンヤのハーモニーに透明感があることは定番でしょう。
この透明感の秘密が「純正律」による和声です。
ゆがみのないコーラスが特徴です。

しかもパッド系の音で構築されていますので、いっそうの透明感を出しています。
純正律による透明感なのかどうか、今ひとつわかりにくくなっています。
しかしエンヤのサウンドは濁りのない美しい響きです。

音楽は純正律で作るのがよいと思います。
純正律の音楽は身体感覚でいえば、整う感じです。
乱れたものがスっと整えられて落ち着きます。
純正律のハーモニーに身体を共鳴させれば、いわゆるヒーリング効果が出てくると思います。
平均律にヒーリング効果は期待できないと思います。

ただし純正律には一つ問題があります。
それは転調をするとおかしな響きになりやすいということです。
といいますか、変な和声になります。
純正律では平均律のテクニックは使えないとみなしてよいでしょう。

純正律を活かしながらも転調を可能にするのが、現代の電子楽器の技術になるのでしょう。
キーボードにも純正律スケールが組み込まれたものも多くなっています。
鍵盤楽器でも純正律音楽を作ることが容易な時代になってきています。

エフェクターで平均律の和音のうねりを誤魔化す

このように平均律の音階は、
そもそも「綺麗な和声(コード)を作ることができない音階」ということだったりします。

すでに書いた通りで、平均律で作る和声には、濁り・ゆがみ・うねりがあります。
ですので、属音(テンションノート)を取り入れて、
和声の濁りを誤魔化す技法も発展していったのだと思います。

しかしテンションノートのコードが効いた音楽をすっと聴いていると疲れてきます。
特に前衛的なジャズがそうです。
もう疲れてしまいます。

ですが、同じテンションが効いたテクノポップをはじめ、
現代の電子音楽では、あまり疲れない感じです。

これは何故でしょうか。
理由はいくつかありますが、一つは、「エフェクター」の使用です。

エフェクターとは、音を加工する装置をいいます。
エコーやリバーブがそうです。
現代の音楽要素の四番目の要因の「エフェクター」です。
 

しかし特に30年くらい前から、シンセサーザーの発達とともに、
モジュレーション系といわれる「うねり」を作るエフェクターが盛んになってきています。

このモジュレーション系エフェクターを通すことによって、
平均律の和音が生み出す「うねり」「濁り」を誤魔化すことができます。

平均律のうねりを、モジュレーション系の「うねり」で誤魔化し、
歪みを聞き取りにくくしてしまうことができるわけですね。
 

ですので、平均律が蔓延している現代では、
モジュレーション系のエフェクターが必須なのはうなずけます。
極端にいえば「音の濁りを消す装置」です。

エフェクターとは、音を加工したり、音象を処理する装置ですが、
実際のモジュレーション系エフェクターの音を聞けば分かるでしょう。
モジュレーション系エフェクターには、コーラス、フランジャー、フェイザーがあります。

「コーラス」エフェクターの響き

まず「コーラス」とうエフェクターです。

エフェクター・デモ演奏:コーラス

このように音空間に広がりが出てきます。
ダブリング効果を作り、文字通り「コーラス」を生み出します。
このコーラスの「うねり」が、和声のうねりをも誤魔化すことができます。

コーラスは、「広がり」を出しながら、ステレオ感の音象を作り出すと、
より深い音像を生み出します。

ローランドでは既に30年前に「ディメンジョン」という三相コーラスエフェクターも出しています。
非常に深みのある独特のコーラスエフェクターです。
三相コーラスは、ソリーナというストリングス電子楽器にも搭載されています。
ウネウネとした音になります。

「フランジャー」エフェクターの響き

次は「フランジャー」です。

Flanger Arion SFL-1

ポットにお湯を注ぐときや、ジェット機が飛び去るときに、
こういうシュォーーンとか、グォーンという音がしますね。

フランジャーとは、まさにこういうジェット機のエンジン音を作るエフェクターです。
実際、フランジャーによる音を昔は「ジェットサウンド」と言っていました。

フランジャーは、独特の強烈なうねり感を出して音を加工します。
フランジャーも「モジュレーション系」エフェクターです。
本当に強烈なうねりです。
フランジャーだけで心地よい音を作ることもできます。

「フェイザー」エフェクターの響き

次は「フェイザー」です。

エフェクター・デモ演奏:フェイザー

フェイザーもモジュレーション系です。
昔、ハモンドにドローバー型オルガンというのがあって、レスリースピーカーというのが特徴でした。
これはスピーカーがクルクル回転しながら音を出す、変わったスピーカーでした。
しかしこの回転スピーカーから出る音が、ジョワジョワオといった音となって聞こえてきます。

フェイザーとは、電気的に位相を変えることで、ドローバー型の音を作り出します。
動画のように音を加工していきます。
フェイザーもそうですが、モジュレーション系のエフェクターを使うと、
音そもののが変わっていきます。

現代はエフェクターで新しい音楽を生み出す~テクノポップ

このように平均律によるコードの「うなり」もモジュレーション系で誤魔化すことができます。
ですので、現代の音楽シーンでは、ユニークなコードを使用して、濁りが出たとしても、
モジュレーション系エフェクターでそれを誤魔化すこともできてしまうわけですね。

しかも、心地よい音像空間や響きを作り、
エフェクターの響きそのものが、新しい音楽を生み出しています。

エフェクターは、もはや現代の音楽では必要不可欠です。
エフェクターがあってこそ、商業音楽は成立しています。
エフェクター様々です。

エフェクターによって、平均律による和声の歪みや濁りを解消できます。
これが平均律によるコードの「おかしさ」を克服したり解消するだけでなく、
エフェクター特有の響きを使って、新しい音楽を作るのが現代の音楽だったりします。
 

しかしこの手法は、40年くらい前から行われていました。
何も最近のことではありません。

そもそもエフェクターは80年代に飛躍的に発展したツールです。
テクノロジーの進化とともに楽器が発展しています。

フェクターはテクノポップでは多用されていました。
特にYMOは、「エフェクターが命」といっていいくらい、エフェクターに依存していたくらいです。

そして、このモジュレーション系エフェクターを、大々的に使用したのが、
ヒーリングミュージックや、ヘミシンクなどのメタミュージックだったりします。
音にゆらぎを与えて音像空間を新しく作り上げることができるわけですね。

で、このエフェクターだけで音楽が出来てしまうところもあります。
現代ではエフェクターの比重が非常に大きくなっています。

エフェクターによるサウンド主体な音楽では平均律の和声が効果音に使われる

こうして、エフェクターの使用が広まると、サウンド主体の音楽も多くなり、
アンビエント、ラウンジ、トランスといったジャンルも多くなってきました。
ヒーリングミュージックや、ヘミシンクなどのメタミュージックもそうですね。
響き・サウンド主体で音楽になってしまうわけです。

これらのサウンド主体の音楽は、複雑なコードをエフェクターをかけることで曖昧にし、
その曖昧さが空間に溶け込むかのような聴覚を引き起こし、
まるで環境に溶け込むかのようなマジックを実現することに成功しています。

アンビエント、ラウンジ、トランスは、平均律による和声が、その元来の機能を放棄し、
一種の効果音として使われる音楽といってよいかと思います。

ここに至って、平均律は、濁った響きの問題は無くなり、
効果音として新たに使われ、リサイクルされて、
全く新しいエッセンスとして使われるようになっています。

音楽の変遷を見るかのようで、大変、興味深いことです。
平均律と純正律の響き。
奥が深いですね。

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